この度は、石狩市森林組合事務局長であるとともに「四季彩の杜をつくる会」の事実上 の旗振り役でもあった藤田宏司氏にこれまでの経緯と今後の展望などをお聞きしました。
- どういうきっかけでこの会ができたのか、そのあたりからお話しいただけますか。
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山本勤氏のお父様 山本金五郎氏が、石狩市森林組合の組合員で、厚田村の森林整備計画などに尽力いただいておりました。
金五郎氏が亡くなってしばらくしてから息子さんの山本勤氏と面談することがありました。
山本勤氏はカナダのバンクーバーの居住経験がある方で、「北海道の山林はトドマツやカラマツなどの針葉樹が多く、バンクーバーにあるような美しさがない。」「今後私が山林にかかわるようなことがあれば、美しく魅力的な杜づくりをしてみたい。子供たちに喜んでもらえる散策路、並木道も作りたい。そんな夢が実現できる見通しとなった場合には是非協力してほしい。」との申し入れを受けました。
私は、「その思いは理解できます。機会があれば協力しましよう。」と答えました。
- その後どういった展開になったのですか。
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数か月後にまた山本勤氏が登場し、「藤田さん、当別町青山にある山林を買っちゃったよ。今は、ただの荒地だけど、ここを切り開いて前に話したように美しい素敵な社にしてみたいんだ。子どもたちの健全育成にも貢献できるようなセラピーのできる杜をつくりたいんだ。」と熱く語ってきたのです。
- いきなり山林を買われて具体的な話になって驚いたでしよう。
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山本勤氏の行動力にビックリでした。
しかも、購入面積が約100ha(30万坪)という広大なものですから更にビックリしました。
- 広大な山林を切り開くのは大変なことですよね。
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そのとおりです。お金もかかるし人手もいります。
私としては、山本勤氏の夢を聞いていましたから、何としても「美しく素敵な社」を実現してあげたい、そのために自分にできることは何でも協力してあげようという気持ちになりました。
- 北海道には、山本勤氏の思いに近いモデルケースの社はあるのでしようか。
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残念ながらありません。だからこそ、自分としては、北海道どころか日本のモデルといわれても恥ずかしくないような「美しく素敵な社」が実現できるとすれば、どんなに感動的なことだろうという思いになりました。
山本勤氏の夢を共有し、これに協力できることはとても跨らしくやりがいのある仕事だと自覚しました。
- そこで、人手の確保として「四季彩の社をつくる会」の立ち上げにつながっていくわけですね。
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そのとおりです。
- その組織化の手掛かりはどのようにしてなされたのでしようか。
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既に「厚田里山再生の会」というのがありまして、どうしようもなく暗くて荒れた里山を再生させるため尽力していました。このグループは、それなりに実績を積んでおり信頼しあえる仲間でした。その方たちに今回の夢ある話を伝えたところ、皆さん興味を示されるとともに快くその趣旨に賛同されました。
そこで、その方たちをベースにあっと言う問に30人ほど組織化することができました。
会則なども整備し、事務局も立ち上げ、現在は月2回くらいのペースで美しく素敵な「四季彩の杜」実現に向け活動しています。
- どんな方が参加しているのでしようか。
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森林組合職員、林業関係者のほか、学校の先生、お医者さん、もと公務員、写真家など多彩な顔ぶれとなっています。
皆さん共通しているのは山がとっても好きなんです。
特にこれまでの厚田里山の荒地の再生とは違って、「美しく素敵な杜をつくるんだ」という目標は、とっても夢とロマンのあるプラス思考の話ですから皆さん熱く燃えています。
- 活動を支える資金的なものはどうなっていますか。
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「つくる会」の会員になっていただいた方からの会費のほかに、国から活動推進・環境保全などの名目で補助金が出ています。これらが活動の原資となり継続的な活動ができています。
- 「美しく素敵な山をつくる」というのは、具体的にはどのようにするのでしようか。
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草刈りから始まって山林を切り開き、計画に基づき適切な場所に適切な樹木を植樹していくことになります。先ほど話題に出ましたが、針葉樹ばかりでは暗いだけで美しくはありません。
色合いのある杜づくりのためには、植樹として、さとうかえで、しらかば、のむらもみじ、そして桜などがチョイスされるとよいでしよう。
ただ、植樹してもこれを養生していくのがなかなか大変です。
人間と同じく樹木も「保育」がキーワードです。
また鹿対策、クマ対策、それにネズミ対策が必要です。
幸い「つくる会」では、工夫に工夫を重ねて植樹のうち年間 90 %も生き抜けるところまで来ています。
皆さんの努力と工夫のたまものといってよいでしよう。今後が楽しみです。
- 今後に向けての課題などを教えてください。
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植林が成功し、着実に美しく素敵な杜に向けて前進していくとしても、憩いのオアシス、セラピーのできる社へと展開していくためには水をどうするかの問題を避けることができません。水源の確保が必須の課題です。
それと、やはり植樹後の養生の問題、美しく素敵な社の継続のためにはただつくって終わりではなくその杜が収益をも生み出すものでなければなりません。貴重な収益が杜の養生の原資となっていくのです。
- 杜をつくるまでもいろいろと課題があって、つくった後もしつかり養生していかねばならないということですね。夢の実現は、とっても大変な事業だということがよくわかりました。
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悩みや課題は多いですが、その分だけやりがいもあるということですね。
夢の実現だと思えば、苦しみも楽しみに転嫁しますよ。
なるほど。まだまだ話は尽きませんが、時間が来てしまいました。とても深くて有意義なお話でした。
私ども札幌トラストライオンズクラブとしても青少年の健全育成や環境保全には特に力を入れており、「四季彩の杜」の一角に桜並木の「トラストロード」を実現させて、皆さんとともに壮大な夢を実現したいと考えております。今後とも協力関係を強めつつ交流を深めていければと願っております。
本日はありがとうございました。